故意の対象は犯罪を構成する事実
故意を検討するときは、まず問題となる犯罪の要件を確認します。窃盗なら物が他人の物であること、殺人なら人の生命に危険を及ぼす行為と死亡結果などについて、行為時の認識が問題になります。法律の条文番号や正確な罪名を知っている必要がある、という意味ではありません。
確定的故意と未必の故意
結果を意図して行う場合だけが故意ではありません。結果が生じるかもしれないと認識し、それでも構わないとして行動した場合も、未必の故意が問題になります。逆に、危険を認識していても結果は起こらないと信じていた場合は、認識ある過失との区別が必要です。用語だけでなく、認識内容と態度を事実から判断します。
具体例で考える
Aが、Bの傘を自分の傘だと思って持ち帰った場合、他人の物を取るという認識が欠けていれば窃盗の故意は認められません。見た目が似ていたか、名前の表示を見たかなど、行為時の事情を確認します。後から他人の傘と気付いたことだけで、持ち帰り時の故意が当然に生じるわけではありません。
事実の錯誤と法律の錯誤
他人の傘を自分の物と考えたのは事実の錯誤です。他人の物だと知りながら「少額なら持ち帰ってよい法律だと思った」という場合は、法律を知らなかった問題で、刑法38条3項も検討します。客観的な事実を知らない場合と、その法的評価を誤る場合を分けます。
試験での使い方
客観的な犯罪事実を示した後、行為者の認識と一致する部分・食い違う部分を整理します。供述だけに頼らず、凶器、行為態様、距離、行為後の対応などから認識を推認し、故意の有無を説明します。
確認問題
他人の傘を自分の傘と本当に思い込んで持ち帰った場合、物を持ち去る意思がある以上、当然に窃盗の故意が認められる。正しいですか。
法令確認基準日:2026年10月22日。本稿は資格学習用の一般的な解説です。
よくある質問
未必の故意は、結果が起こると確信していた場合に限られますか。
限られません。結果発生の可能性についての認識と、それでも行為する意思のあり方が問題になります。具体的事実から過失と区別します。