学習法
論文のあてはめを練習する方法|事実を写す前に評価する
あてはめは問題文の事実を並べる作業ではなく、要件や判断基準に照らして意味を説明する作業です。少数の事実で一段落を書き、反対事情と結論までつなぐ練習方法を紹介します。
法律上の問いを一つに絞る
一度に答案全体を整えようとせず、「第三者が保護されるか」「故意があるか」「処分性があるか」など一つの問いを決めます。次に、その問いを判断するための条文と基準を短く書きます。基準が曖昧だと、どの事実を選ぶべきかも決まりません。
例えば民法95条なら、錯誤が重要か、表意者に重過失があるか、第三者の保護はどうなるかを別の問いにします。問題全体で重要な事実が、今書こうとしている特定要件の判断にも重要とは限りません。要件ごとに使う事実を選び直します。
事実と、その意味を二列に分ける
左に問題文の具体的事実、右にその要件にとっての意味を書きます。「契約前に確認資料を受け取った」は事実であり、「容易に誤りを発見できた方向の事情」は評価です。評価だけを書くと根拠が見えず、事実だけを書くと基準との結び付きが見えません。
一つの事実から複数の評価が可能な場合は、どの前提が必要かを明らかにします。資料が難解だった、説明が紛らわしかったという事情があるなら、受領した事実だけで結論を決められないことが分かります。問題文にない事情を都合よく補わないようにします。
反対事情を同じ基準で比較する
反対の結論を支える事情を一つ選び、その意味を説明します。賛成事情は具体的に書き、反対事情だけ「重要ではない」と切り捨てる書き方は避けます。なぜ一方が重いか、程度、時間、代替手段、本人が置かれた状況など、その要件に関わる観点から比べます。
刑法上の故意を論じるなら、危険な行為態様と本人の弁解を、行為時の認識・意思という共通の問いに戻します。犯行後の反省の有無を、行為時の認識を直接置き換える事情として扱わないようにします。制度ごとに評価軸が異なる点にも注意します。
百数十字の段落で結論まで書く
練習では「事実Aは要件Xを支える。反対事情Bはあるが、理由Cから本件ではDと評価できる。したがってXを満たす」という流れを、自然な文章で書きます。型は論理を点検するための補助で、すべての論点で同じ接続詞を繰り返すためのものではありません。
出来上がった段落から事実部分を消しても同じ文章が成立するなら、抽象論に寄り過ぎていないか点検します。逆に基準を消すと事実の箇条書きになるだけなら、事実の法的意味を補います。結論がどちらかだけでなく、基準と事実がつながっているかを見直します。
解説との違いを一つだけ記録する
解説と比べる際は、同じ語句が使えているかだけで採点しません。要件の選択、事実の読み落とし、評価の飛躍、反対事情の扱い、結論の限定のどれが違うかを一つ選びます。「もっと詳しく書く」という曖昧な反省より、次の答案で再現しやすくなります。
同じ事実で基準だけを変えるのではなく、次は一つの事情を入れ替えた短い事例を解きます。その変化で結論又は説明の重みが変わるかを確認すれば、元の解説を暗記しただけか、基準を使えるようになったかを判別できます。