窃盗罪では他人の財物を占有者の意思に反して自己又は第三者の占有へ移すことを検討します。所有権の帰属、事実上の占有、不法領得の意思という異なる問題を切り分けます。
制度の仕組みと検討する要件
刑法235条の窃盗では、財物が誰の事実上の支配にあるかを確認します。占有は手で持っている場合に限らず、場所、時間的・場所的な隔たり、管理の状況等から認められることがあります。置き忘れた物を見つけた場合も、持主の占有がなお残るか、施設管理者の占有があるかを確認し、直ちに遺失物として扱いません。
不法領得の意思は、権利者を排除して財物を自己の所有物のように利用・処分する意思という整理が基本です。経済的用法に従う利用・処分か、単なる破壊目的か、短時間の使用でも権利者排除があるか等を具体的に判断します。自分の所有物でも他人の適法な占有等に置かれた場合に関する242条もあり、所有者であることだけで窃盗を否定できるとは限りません。
判断の順序
- 対象が他人の財物か、誰の占有下にあるかを確定する。
- 占有者の意思に反する占有移転とその時点を確認する。
- 権利者排除・利用処分の意思、横領や遺失物等との区別を検討する。
事例へのあてはめ
客が店内の机に財布を置いて席を離れ、すぐ戻る状況でAが財布を持ち出した例では、置き忘れたという言葉だけで占有離脱物と判断しません。客の所在や時間、店側の管理を踏まえて占有を判断します。財布の金を使う目的で持ち出した事情は、不法領得の意思にも関わります。
混同しやすい点
窃盗と横領の区別では、行為前から行為者自身がその財物を占有していたかが重要です。民法上の所有権移転や占有権の議論と、刑法上の占有認定をそのまま同一視しないようにします。
確認問題
解答・解説:必ず占有が失われるわけではありません。持主との時間・場所の関係や施設管理者の支配を確認します。占有の有無を具体的に判断してから、窃盗又は遺失物等横領などを検討します。
根拠となる一次資料
よくある質問
持主がその場にいない財布は、必ず誰の占有にも属さず、持ち去っても窃盗にはなりませんか。
必ず占有が失われるわけではありません。持主との時間・場所の関係や施設管理者の支配を確認します。占有の有無を具体的に判断してから、窃盗又は遺失物等横領などを検討します。