横領と背任は、任されていた財産を裏切るという印象だけでは区別できません。自己の占有する他人の物を処分したか、他人の事務で任務に背き財産上の損害を与えたかを確認します。
要件と制度の位置づけ
252条1項の横領罪は、自己の占有する他人の物を横領した場合です。任されて保管する物について、権限がないのに所有者のように処分するなど、不法領得の意思を実現した行為かを検討します。業務に基づく占有なら253条、他人の占有を離れた物なら254条が問題になります。物の所有者と占有者、占有の根拠を先に確定します。
247条の背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加える犯罪です。単に契約に違反しただけで当然に背任ではありません。他人の事務と自己の事務の区別、任務違背、図利加害目的、財産上の損害をそれぞれ検討します。
両罪が問題となる場面では、他人から預かった特定の物を自己の物として処分したと評価するのか、事務処理の権限を濫用して財産全体に損害を与えたと評価するのかを具体化します。不動産については登記等に基づく法律上の支配も占有の判断で問題となり得ます。「動産なら横領、取引なら背任」という形式的な仕分けは正確ではありません。
判断の順序
- 物の所有者・占有者と、委託又は事務処理の関係を整理する。
- 横領行為か、任務違背行為かを具体的な処分から評価する。
- 背任では目的と財産上の損害、横領では業務性等の類型を確認する。
具体例で考える
Aが友人から保管を頼まれたカメラを勝手に売った例では、自己占有の他人物の処分として横領を検討します。会社の担当者Bが自己の利益のため、任務に背いて会社に著しく不利益な取引をさせた例では、他人の事務、目的、損害等から背任を検討します。同じ信頼違反でも、対象と行為の構造が異なります。
区別すべき問題
窃盗は他人の占有を侵害する点、横領は自己の占有する物を対象とする点で区別します。所有名義だけでは占有を決められません。背任の財産上の損害も、本人が不満を持ったことと同じではなく、経済的な不利益を特定します。
確認問題
解答・解説:必ず成立するとはいえません。他人の事務処理者であること、任務違背、図利加害目的、財産上の損害を検討します。単なる債務不履行と刑法上の背任を区別する必要があります。
根拠となる一次資料
よくある質問
他人のための契約に違反して損をさせれば、図利加害目的を確認せずに必ず背任罪が成立しますか。
必ず成立するとはいえません。他人の事務処理者であること、任務違背、図利加害目的、財産上の損害を検討します。単なる債務不履行と刑法上の背任を区別する必要があります。