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訴訟物とは?請求・主張・争点との違い

訴訟物を、裁判で判断を求める対象として整理。貸金返還請求の例で、請求の趣旨・請求原因・争点との違いと、重複訴訟や既判力へのつながりを解説します。

更新日: 2026年10月22日著者: LavaLex編集部

30秒でわかる結論

訴訟物は、その訴訟で裁判所に判断を求める対象です。個々の事実の主張や証拠とは区別し、誰が誰にどの権利・法律関係についてどんな判断を求めるかを特定します。

到達目標

  • ✓訴訟物と争点の違いを説明する
  • ✓具体的な請求を特定する要素を整理する
  • ✓二重起訴・訴えの変更・既判力との関係を説明する

ひっかけポイント

  • !「お金を払え」という文言だけで請求を特定しない
  • !証拠や主要事実をそのまま訴訟物と呼ばない
  • !訴訟物の学説上の立場を混ぜない

試験別重要度

S/A/B/Cは、各試験での学習優先度を示す目安です。出題年度や個別の学習状況に応じて補助的に使ってください。

裁判で何を決めてもらうのか

AがBに貸した100万円の返還を求める場合、「100万円を支払え」という求めだけでは、売買代金なのか貸金なのか分かりません。請求の趣旨と請求原因を合わせ、どの権利・法律関係を審理するかを明確にします。民事訴訟法133条2項が訴状に請求の趣旨と原因を記載させるのは、この特定に関わるためです。

請求・主張・争点を分ける

訴訟上の請求は、原告が裁判所に一定の権利保護を求める申立てです。「100万円を貸した」「返済期限が来た」は請求を根拠づける事実の主張です。Bが借入れ自体を否認すれば契約の成立が争点となり、返済済みと主張すれば弁済の有無が争点となります。争点が増えても、常に訴訟物まで増えるわけではありません。

特定するときの順序

  1. 当事者と求める判決の内容を確認する。
  2. どの実体法上の権利や法律関係を基礎とするかを確認する。
  3. 同じ当事者間の別請求と区別できる事実を確認する。
  4. 訴えの変更、重複訴訟、既判力のどの場面で同一性が問題かを示す。

学説との関係

訴訟物の捉え方には、実体法上の権利を基準とする立場と、紛争や給付の内容などを重視する立場があります。契約上の請求権と不法行為上の請求権が同じ損害について生じる例では、立場によって整理が変わり得ます。入門段階では結論だけを覚えず、どの基準で一つと数えるのかを言葉にしましょう。

根拠条文と確認日

法令適用基準日・確認日:2026年10月22日。下記の根拠条文を基にした資格学習用の一般的解説です。事例と確認問題はLavaLexのオリジナルです。

よくある質問

訴訟物と争点は同じですか。

異なります。訴訟物は判断を求める対象で、争点はその判断に必要な事項のうち当事者間で争われている点です。

例題で確かめる

まず自分で答えてから、解説を開いて確かめてください。下の確認カードは、内容を見直して自分の復習に保存できます。

最初に押さえること

訴訟物は裁判所が判断する権利又は法律関係です。請求の趣旨と原因から審判対象を把握し、その判断を支える主要事実や証拠と区別すると、訴えの変更や既判力の範囲も整理できます。

  1. 誰が誰に、何を求めているかを請求の趣旨で確認する。
  2. どの権利又は法律関係を主張しているかを特定する。
  3. 主張・証拠の追加なのか、請求自体の追加・変更なのかを区別する。
効果
対象が定まると、必要な請求原因・抗弁を整理でき、後の事件との同一性や既判力の範囲も検討できます。複数の請求をまとめる場合には136条、請求等を変更する場合には143条を確認します。
例外・注意点
同じ事件の言い分でも、どの請求権を選択するかによって主張立証の構造が変わり得ます。不明確なら釈明により特定し、提出された証拠の数から訴訟物を数えないようにします。
主要事実・証拠との比較
訴訟物は判断する権利、主要事実はその発生等を基礎付ける事実、証拠は事実を認定する資料です。一枚の契約書から複数の事実が読めても、契約書そのものが訴訟物になるわけではありません。

事例で考える

Aは同じ売買契約に基づく代金80万円の請求を維持したまま、以前に提出した契約書に加えて新たな証人を申し出ました。Bは「証人が増えたので別の訴訟物になった」と述べました。

証人の追加だけで審判対象は変わりますか。

答えと理由を見る

変わりません。証拠方法の追加と、請求権という審判対象の変更は別です。

Aが求めているのは引き続き同じ売買代金80万円の支払です。証人はその判断に必要な事実を認定するための証拠方法で、人数が増えたことは請求権を増やすものではありません。請求の表示と証拠の申出を分けて整理します。

自分の言葉で説明する

主要事実・証拠との違いを、自分の言葉で説明してください。

説明例を見る

訴訟物は判断する権利、主要事実はその発生等を基礎付ける事実、証拠は事実を認定する資料です。一枚の契約書から複数の事実が読めても、契約書そのものが訴訟物になるわけではありません。 同じ事件の言い分でも、どの請求権を選択するかによって主張立証の構造が変わり得ます。不明確なら釈明により特定し、提出された証拠の数から訴訟物を数えないようにします。

答案にするときの書き方

上の事例に対する短い記述例です。実際の答案では、設問に応じて他の要件や反対事情も検討します。

争点
証人の追加だけで審判対象は変わりますか。
判断の基準
訴訟物は裁判所が判断する権利又は法律関係です。請求の趣旨と原因から審判対象を把握し、その判断を支える主要事実や証拠と区別すると、訴えの変更や既判力の範囲も整理できます。
事実へのあてはめ
Aが求めているのは引き続き同じ売買代金80万円の支払です。証人はその判断に必要な事実を認定するための証拠方法で、人数が増えたことは請求権を増やすものではありません。請求の表示と証拠の申出を分けて整理します。
結論
変わりません。証拠方法の追加と、請求権という審判対象の変更は別です。

覚えておきたい問い

訴訟物と主要事実はどう違いますか。

答えを確かめる

訴訟物は裁判所が判断する権利又は法律関係であり、主要事実はその権利の発生等を基礎付ける具体的事実である。主張の内容を整理する際は、判断対象とそれを支える事実を同じものとして扱わない。 訴訟物は審判の対象となる権利又は法律関係を意味し、証拠の名称ではない。証拠はその判断に必要な事実を認定するための資料であり、信用性の評価によって訴訟物が選ばれるわけではない。

保存した内容を見る

訴状で請求をどのように特定しますか。

答えを確かめる

134条2項は請求の趣旨及び原因の記載を要求している。証拠は主張を裏付ける資料であり、提出しただけで原告がどの権利についてどの救済を求めるかを当然に代替表示するものではない。 134条2項は訴状に当事者等と請求の趣旨及び原因を記載することを求める。請求の表示は審判対象の特定と相手方の防御の準備に関わるため、金額や対象、権利の根拠を曖昧にしたままにしない。

保存した内容を見る

証拠を追加すると訴訟物も増えますか。

答えを確かめる

訴訟物の変更と証拠資料の追加は別である。証拠の提出は同じ請求権の存否を判断するための事実認定に用いられ得るが、領収書を追加したという形式的な理由だけで請求対象が変わることにはならない。 証人は証拠方法であり、その人数と訴訟物の個数は対応しない。原告がどの権利についてどの救済を求めるかと、そのために何を証拠として用いるかを区別して整理する必要がある。

保存した内容を見る

複数請求の併合と訴えの変更には何を確認しますか。

答えを確かめる

136条は数個の請求の併合について、同種の訴訟手続による場合に限ると定める。関連する請求が複数あることと、それを一つの手続でまとめて審理できるかは別に確認すべき問題である。 143条1項は請求の基礎に変更がないことを条件とし、著しく訴訟手続を遅滞させる場合も除外する。口頭弁論終結までという時的制限もあり、訴訟中なら無条件に請求を変えられるという規定ではない。

保存した内容を見る

訴訟物の把握は既判力の範囲とどう関わりますか。

答えを確かめる

114条1項は主文に包含するものに限って既判力を認める。訴訟物の把握は確定した判断の対象を明らかにするために必要であり、理由中に出てきたすべての事実を一律に確定する制度ではない。 実体法上の請求権を基準にすると、同じ明渡しという給付を求めても、その根拠となる所有権上の請求権と契約終了に基づく請求権は区別する。選択した訴訟物によって必要な主要事実や抗弁の整理も変わり得る。

保存した内容を見る

答案・記述式での使い方

最初に請求の趣旨と原因を示し、採用する訴訟物の考え方に従って審判対象を特定します。そのうえで、重複訴訟や前訴判決との関係を判断します。

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