民訴法142条は、裁判所に係属している事件を重ねて提訴することを禁じます。当事者・審判対象・係属時期を確認し、関連事件であることと同一事件であることを区別します。
制度の仕組みと検討する要件
重複起訴の禁止は、当事者の応訴負担、審理の重複、判断の抵触を防ぐためのルールです。訴状を提出した事実だけでなく、先の訴訟の係属が生じているか、後の訴えがどの請求を審判対象としているかを確かめます。同じ契約に関連する複数の請求が、当然にすべて同一事件になるわけではありません。
請求の趣旨の文言が違っても、権利関係の存否を表裏から争う関係などでは、審判対象の実質を検討します。相殺の抗弁は独立の訴えではありませんが、114条2項が一定の既判力を認めるため、他訴で争われる自働債権の扱いには判断抵触の問題があります。通常の二つの訴えの場合と、抗弁で登場する場合を分けて考えます。
判断の順序
- 先行訴訟の当事者・請求・係属の有無を確定する。
- 後行訴訟の審判対象と先行訴訟を比較する。
- 重複部分と残る請求を分け、手続上の帰結を説明する。
事例へのあてはめ
AがBに貸金100万円の返還訴訟を提起して係属させた後、別の裁判所に同じ貸金100万円の返還訴訟を重ねて提起する場合は142条が問題となります。これと、同じ契約から別個に発生した損害賠償請求を追加する場合とは同一視できません。どの債権をどこまで審判対象にしたかを特定します。
混同しやすい点
重複起訴は訴訟係属中の問題です。先行訴訟の判決が確定した後は、既判力や訴えの利益の問題として検討する場面があります。係属前・係属中・確定後を時系列で分けることが大切です。
確認問題
解答・解説:当然には却下されません。同じ事故という背景事情だけでなく、当事者と審判対象が同一かを検討します。関連する事件を併合する問題と、同一事件の重複提訴を禁止する問題は別です。
根拠となる一次資料
よくある質問
同じ事故から生じた請求であれば、請求する権利や当事者が異なっていても142条で当然に後の訴えが却下されますか。
当然には却下されません。同じ事故という背景事情だけでなく、当事者と審判対象が同一かを検討します。関連する事件を併合する問題と、同一事件の重複提訴を禁止する問題は別です。