不法行為の基本
民法709条は、契約関係がない相手に対しても、違法な加害によって生じた損害の賠償を求める基本規定です。何の利益が侵害されたか、どの行為がどの損害をもたらしたか、行為者に故意または過失があるかを具体的に確認します。精神的損害には710条も関わります。
具体例で考える
自転車を運転するAが前方を見ずに進み、歩行者Bに衝突してけがをさせた場合を考えます。前方確認義務への違反、身体の侵害、治療費や休業損害、衝突とけがとの因果関係を順に整理します。「Bが転んだ」という結果だけから、Aの過失まで自動的に決めることはできません。
判断するときの順序
- 加害行為と、侵害された権利・法律上保護される利益を特定する。
- 当時の具体的状況から、故意または要求される注意を怠った過失を検討する。
- 損害項目ごとに金額と因果関係を確認し、責任能力や過失相殺などの問題を分けて判断する。
例外・関連制度との区別
契約違反による損害賠償と不法行為による損害賠償は、根拠も要件も同一ではありません。同じ事故で両方が問題になることはあります。また、責任能力を欠く未成年者等については712条以下の特則、使用者や工作物については別の責任規定があるため、709条だけで完結させないようにします。
確認問題
解答・解説:誤りです。契約がなくても709条などの要件を満たせば、不法行為に基づく損害賠償を請求できます。
よくある質問
被害者にも落ち度があれば請求はすべて否定されますか。
必ずしもそうではありません。722条2項の過失相殺により賠償額を調整する場合があります。責任の有無と金額調整を分けます。