訴因は検察官が審判を求める犯罪事実を特定し、防御の対象を示すものです。認定予定の事実と訴因を比べ、変更の必要性と、公訴事実の同一性という許される限界を分けます。
制度の仕組みと検討する要件
刑訴法256条3項は日時・場所・方法をできる限り示して罪となるべき事実を特定するよう求めます。訴因によって審判対象を区切り、被告人は何に防御すべきかを把握します。証拠から別の事実が分かった場合も、結論の罪名が同じだから訴因変更は不要と即断せず、防御に与える影響を具体的に確認します。
312条1項は、公訴事実の同一性を害しない限度で検察官の請求による訴因等の追加・撤回・変更を認めます。変更が必要かという問いと、同一性の範囲内で許されるかという問いは別です。審判対象の画定に不可欠な事実の変更には訴因変更を要し、それ以外でも一般的に防御に重要な事実が訴因に明示された場合は原則として変更を要します。後者では、具体的な審理の経過から不意打ちがなく、認定が訴因に比べて不利益ともいえない場合に例外を検討します。必要なら防御準備のための手続停止等も確認します。
判断の順序
- 起訴状の訴因と認定予定事実の違いを列挙する。
- 審判対象の画定と防御への影響から変更の要否を検討する。
- 変更する場合は公訴事実の同一性と防御準備の保障を確認する。
事例へのあてはめ
一つの暴行事件で、起訴状が「Aが自ら殴った」としていたのに、審理では「Bと共謀しBが殴った」と認定しようとする例では、共謀や現場での役割に対する防御が十分だったかが重要です。単に被害者と結果が同じだから手続不要とはせず、必要性と変更の許容範囲を別々に論じます。
混同しやすい点
訴因変更の要否と、変更後の訴因を証拠で合理的疑いなく認定できるかは別問題です。訴因変更が許可されたこと自体は、被告人の有罪を意味しません。
確認問題
解答・解説:常に不要とはいえません。罪名だけでなく、審判対象を画する事実と防御の実質を比較します。変更が必要な場合には、312条の公訴事実の同一性と防御準備の保障をさらに検討します。
根拠となる一次資料
よくある質問
同じ罪名のままなら、行為態様や共謀の有無が変わって防御に影響しても訴因変更は常に不要ですか。
常に不要とはいえません。罪名だけでなく、審判対象を画する事実と防御の実質を比較します。変更が必要な場合には、312条の公訴事実の同一性と防御準備の保障をさらに検討します。