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訴訟上の相殺|予備的な抗弁と既判力の範囲

訴訟上の相殺は、原告の請求が認められる場合に備えて自分の債権を対当額で消滅させる主張です。民法上の相殺要件と、裁判所が判断する順序、民訴法114条2項の既判力を分けます。

更新日: 2026年10月24日著者: LavaLex編集部

30秒でわかる結論

訴訟上の相殺は、原告の請求が認められる場合に備えて自分の債権を対当額で消滅させる主張です。民法上の相殺要件と、裁判所が判断する順序、民訴法114条2項の既判力を分けます。

到達目標

  • ✓原告の請求と被告の他の防御を先に検討する。
  • ✓相殺判断が必要な額と民法上の相殺要件を確認する。
  • ✓自働債権について実際に判断された範囲を114条2項に結び付ける。

ひっかけポイント

  • !反訴は被告が独立の給付判決などを求める訴えです。相殺の抗弁は原告請求を退けるための防御なので、自働債権の残額の支払まで求めるには別途請求の手続を検討します。

試験別重要度

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訴訟上の相殺は、原告の請求が認められる場合に備えて自分の債権を対当額で消滅させる主張です。民法上の相殺要件と、裁判所が判断する順序、民訴法114条2項の既判力を分けます。

制度の仕組みと検討する要件

被告が請求原因を否認し、仮に原告の請求権が認められるなら相殺すると主張することがあります。相殺は自分の債権を消滅させる不利益も伴うため、通常は他の防御を先に判断し、相殺を判断する必要がある範囲を確かめます。自働債権と受働債権、相殺適状、意思表示、相殺禁止など民法上の要件も欠かせません。

確定判決の理由中の判断には原則として既判力がありませんが、114条2項は相殺のため主張した請求の成立又は不成立の判断に、相殺をもって対抗した額の限度で既判力を認めます。自働債権の全額が常に確定するわけでも、相殺を主張しただけで既判力が生じるわけでもありません。実際にどの範囲が判断されたかを確認します。

判断の順序

  1. 原告の請求と被告の他の防御を先に検討する。
  2. 相殺判断が必要な額と民法上の相殺要件を確認する。
  3. 自働債権について実際に判断された範囲を114条2項に結び付ける。

事例へのあてはめ

原告が100万円を請求し、被告が150万円の反対債権で相殺を主張したとします。原告債権100万円が認められ、その全額に対する相殺のため反対債権を判断した場合、114条2項の対象は相殺をもって対抗した100万円の範囲です。残り50万円まで当然に判決が確定させるわけではありません。

混同しやすい点

反訴は被告が独立の給付判決などを求める訴えです。相殺の抗弁は原告請求を退けるための防御なので、自働債権の残額の支払まで求めるには別途請求の手続を検討します。

確認問題

解答・解説:生じません。同項が対象とするのは相殺のためにした請求の成立・不成立の判断です。相殺の必要がなく判断されなかった債権まで、主張したという理由だけで確定することはありません。

根拠となる一次資料

よくある質問

原告の請求権が存在しないとして棄却され、相殺について判断されなかった場合、自働債権にも114条2項の既判力が生じますか。

生じません。同項が対象とするのは相殺のためにした請求の成立・不成立の判断です。相殺の必要がなく判断されなかった債権まで、主張したという理由だけで確定することはありません。

例題で確かめる

まず自分で答えてから、解説を開いて確かめてください。下の確認カードは、内容を見直して自分の復習に保存できます。

最初に押さえること

訴訟上の相殺は、原告の請求を排斥するための抗弁です。原告債権の発生を否認しつつ予備的に提出することもできます。自働債権を判断した場合の既判力と、他の訴訟との重複に注意します。

  1. 原告の請求債権と、相殺に用いる自働債権を分ける。
  2. 相殺の判断が実際に必要か、どの額を対抗させたかを確認する。
  3. 自働債権の別訴係属と、114条2項・142条の関係を調べる。
効果
相殺のために主張した請求の成立・不成立の判断には、相殺をもって対抗した額について既判力が生じます。原告の請求が別の理由で否定され、相殺が判断されなければ、この効力は生じません。
例外・注意点
相殺を主張しただけでは、自働債権全額の支払を求める反訴にはなりません。別訴係属債権による相殺は、判例が重複起訴禁止の趣旨から制限する場面と、事案の手続関係を確認します。
反訴との比較
相殺の抗弁は原告の請求に対する防御、反訴は自分の請求を判決で認めてもらう訴えです。同じ債権に言及していても、求める救済と判断の効力を同じものとして扱いません。

事例で考える

BはAの60万円の請求に対し、自働債権100万円のうち60万円で相殺すると主張しました。裁判所は、その60万円の自働債権の成立を判断して相殺を認めました。

114条2項の既判力は、未使用の40万円にも当然に及びますか。

答えと理由を見る

当然には及びません。同項の範囲は、相殺をもって対抗した60万円です。

元の自働債権全体の額と、当該訴訟で対抗して判断された額は異なります。114条2項は後者の額に限って既判力を認めるので、設例の判断から残り40万円の存否まで確定されたとは扱いません。相殺が実際に判断されたことも確認します。

自分の言葉で説明する

反訴との違いを、自分の言葉で説明してください。

説明例を見る

相殺の抗弁は原告の請求に対する防御、反訴は自分の請求を判決で認めてもらう訴えです。同じ債権に言及していても、求める救済と判断の効力を同じものとして扱いません。 相殺を主張しただけでは、自働債権全額の支払を求める反訴にはなりません。別訴係属債権による相殺は、判例が重複起訴禁止の趣旨から制限する場面と、事案の手続関係を確認します。

答案にするときの書き方

上の事例に対する短い記述例です。実際の答案では、設問に応じて他の要件や反対事情も検討します。

争点
114条2項の既判力は、未使用の40万円にも当然に及びますか。
判断の基準
訴訟上の相殺は、原告の請求を排斥するための抗弁です。原告債権の発生を否認しつつ予備的に提出することもできます。自働債権を判断した場合の既判力と、他の訴訟との重複に注意します。
事実へのあてはめ
元の自働債権全体の額と、当該訴訟で対抗して判断された額は異なります。114条2項は後者の額に限って既判力を認めるので、設例の判断から残り40万円の存否まで確定されたとは扱いません。相殺が実際に判断されたことも確認します。
結論
当然には及びません。同項の範囲は、相殺をもって対抗した60万円です。

覚えておきたい問い

相殺の抗弁だけで自働債権の支払を命ずる判決を求めたことになりますか。

答えを確かめる

相殺の抗弁はAの請求に対する防御であり、それだけでBのAに対する給付請求が審判対象になるわけではない。自己への支払を求める反訴の提起とは、目的と手続を区別する。 相殺の抗弁は原告の請求を排斥するための防御であり、反訴によって自己への給付を求めることとは異なる。相殺に用いた債権の判断には114条2項の特則があるが、請求の趣旨を伴う反訴と同一にはならない。

保存した内容を見る

請求原因を否認しながら予備的に相殺を主張できますか。

答えを確かめる

相殺は原告の債権が認められる場合に備えて予備的に提出できる。抗弁の提出と、原告の主張する主要事実の自白は別であり、相殺を主張した形式だけから否認の撤回を導くことはできない。 訴訟上の相殺は、原告の債権が認められる場合に備えた予備的な抗弁として主張できる。否認と予備的な抗弁の提出は両立し、相殺を述べたことだけで請求原因を全面的に認めたとはいえない。

保存した内容を見る

相殺の自働債権の判断に既判力が生じる額はどこまでですか。

答えを確かめる

114条2項は相殺をもって対抗した額について既判力を認める。元の自働債権全体の額と、当該訴訟で実際に相殺に供して判断された額を区別し、未使用の残額まで当然に拡張しない。 114条2項の既判力は相殺をもって対抗した額に限定される。設問で相殺に用いて判断されたのは60万円であり、その判断だけで未使用の40万円にも同じ既判力を認めることはできない。

保存した内容を見る

相殺に入らず原告の請求を棄却した場合、自働債権は確定しますか。

答えを確かめる

114条2項は相殺のために主張した請求の成立又は不成立の「判断」に既判力を認める。原告の請求自体が否定され、予備的な相殺の審理判断に入らなかった場合は、自働債権の存否は確定されない。 相殺を主張したことと、そのための請求の成立・不成立が裁判所によって判断されたことは異なる。判断されていない自働債権について、相殺の提出だけを理由に不存在の既判力を生じさせることはできない。

保存した内容を見る

別訴係属債権による相殺では何を確認しますか。

答えを確かめる

別訴との同一性や判断の重複は、当事者、債権の発生原因、対象額、手続の順序等に即して判断する。単に相殺という名称で一律に処理せず、判例の事案と区別される事情の有無も確認する。 相殺の抗弁でも自働債権の判断に114条2項の既判力が生じるため、別訴係属中の同じ債権をさらに相殺に用いると、審理の重複や判断抵触が問題になる。判例は142条の趣旨からこの通常の場面を制限する。

保存した内容を見る

答案・記述式での使い方

自働債権について実際に判断された範囲を114条2項に結び付ける。

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