人を死亡させた場合の罪名は結果の重大さだけで決まりません。殺意の有無、暴行・傷害の故意、死亡との因果関係を順に検討し、殺人・傷害致死・過失致死等を区別します。
制度の仕組みと検討する要件
刑法199条の殺人罪では人を死亡させる故意が必要です。死を確実に望んでいる場合だけでなく、死亡の可能性を認識しそれでも行う意思があったかも問題になります。凶器、攻撃部位、力や回数、犯行前後の言動等から具体的に判断し、死亡という結果から故意を逆算しません。
205条の傷害致死罪は傷害によって人を死亡させる結果的加重犯です。殺意がなくても、暴行・傷害の故意と死亡結果との因果関係等を検討します。殺意のある行為で死亡しなかった場合は殺人未遂の問題となり、傷害の程度が軽いから直ちに傷害罪だけになるわけではありません。
判断の順序
- 誰へのどの行為が死亡又は傷害を生じさせたかを確定する。
- 行為時の死亡の認識・意思と、暴行又は傷害の故意を区別する。
- 結果と因果関係、既遂・未遂、正当防衛等を順に検討する。
事例へのあてはめ
AがBの胸部を刃物で繰り返し刺し、死亡の危険を認識していたと考えられる例では、Aが「死んでほしいとは思わなかった」と話しただけで殺意を否定できません。一方、殺意なく殴った行為でBが転倒して死亡した例では、傷害致死等を検討し、転倒・死亡へ至った経過から因果関係を判断します。
混同しやすい点
殺意は犯行後の反省の有無と同じではありません。救護したことは判断材料になり得ますが、行為時にどの危険を認識して実行したかという問いを置き換えるものではありません。
確認問題
解答・解説:検討する必要があります。殺人未遂は殺意と実行の着手等によって判断し、実際の傷害の重さだけで罪名を決めません。死亡していないことは既遂ではなく未遂を検討する理由になります。
根拠となる一次資料
よくある質問
殺意をもって攻撃したものの被害者が助かった場合、実際の傷が軽ければ殺人未遂を検討しなくてよいですか。
検討する必要があります。殺人未遂は殺意と実行の着手等によって判断し、実際の傷害の重さだけで罪名を決めません。死亡していないことは既遂ではなく未遂を検討する理由になります。