経営判断は将来の予測を伴うため、後から損失が分かったことだけで取締役の責任を決めません。判断当時の情報、意思決定の過程、決定内容の合理性を具体的に検討します。
制度と判断の出発点
経営判断原則は、取締役の事業判断に一定の裁量を認める考え方です。条文上の包括的な免責規定ではなく、善管注意義務違反の判断方法として扱います。情報収集の不足や判断の前提の誤り、利益相反、法令違反等があれば、その性質に応じた検討が必要です。
アパマンショップ事件では、完全子会社化に向けた株式の買取価格が問題となりました。算定評価額との比較だけでなく、事業再編の効果、株主との関係、検討会議や弁護士の意見聴取等の事情が考慮されています。価格が評価額を上回ったことだけで、義務違反と結論付けなかった点を読みます。
事例で確認する順番
- 判断の目的、当時利用できた情報、取締役の利害関係を整理する。
- 情報収集・検討手続と、決定内容の合理性を分けて評価する。
- 判断当時に照らした任務懈怠の有無と、損害・因果関係を検討する。
具体例で考える
新規事業が失敗した場合、失敗後に分かった事情を、当然に判断時にも知るべきだったと扱わないようにします。一方、重要な危険情報を知りながら何も検討しなかった事情は、単なる事業リスクとは区別して評価します。
区別しておきたい点
裁量があることは、判断過程の記録や検討が不要という意味ではありません。また、利益相反取引や法令違反について、通常の事業上の不確実性と同じ扱いをしてよいかは別に検討します。
確認問題
解答・解説:買収や再編の目的、期待できる事業効果、株主との関係、評価方法の幅、会議や専門家への相談等を確認します。後知恵ではなく、判断当時の過程と内容を検討します。
根拠条文・判例
よくある質問
株式の買取価格が算定評価額より高いと分かりました。善管注意義務違反の判断で、価格差に加えて何を確認しますか。
買収や再編の目的、期待できる事業効果、株主との関係、評価方法の幅、会議や専門家への相談等を確認します。後知恵ではなく、判断当時の過程と内容を検討します。