会社分割は、事業に関する権利義務の全部又は一部を、契約又は計画に従って承継させる制度です。債務の承継先と債権者が請求できる相手を確定してから、異議手続や残存債権者の保護を検討します。
仕組みと条文の読み方
既存会社に承継させる吸収分割と、新会社に承継させる新設分割があります。吸収分割契約や新設分割計画で承継対象となる権利義務を定め、その範囲で法定の承継の効果が生じます。会社が消滅して権利義務を包括承継する合併と異なり、分割会社が存続することを先に押さえます。
債権者保護では、どの債権者に異議権があるかが重要です。789条1項2号や810条1項2号は、分割後に分割会社へ履行を請求できなくなる債権者などを対象としています。契約における対価の交付の仕方によって対象が変わる場合もあります。「すべての債権者に常に同じ手続が必要」とするのは正確ではありません。
異議権のある知れている債権者への各別催告と官報公告が基本で、異議期間は1か月以上です。所定の二重公告で各別催告を省略できる場合にも、不法行為債権者についての例外があります。債権が契約によるものか、不法行為によるものかが、通知の要否に影響することを見落とさないようにします。
分割会社に債務が残る残存債権者についても、資産流出によって害される危険があります。759条4項や764条4項は、分割会社が残存債権者を害することを知って行った分割について、承継会社・新設会社に対する履行請求を定めます。承継した財産の価額が責任の限度となることや、吸収分割の承継会社の善意など、条文ごとに異なる条件を確認します。
事例を検討する順番
- 分割の種類と契約・計画に記載された承継対象を確認する。
- 各債権者が分割後に誰へ履行請求できるかを整理する。
- 異議手続と、害される残存債権者の保護を別々に検討する。
具体例に当てはめる
A社が収益性の高い事業をB社へ分割承継させ、銀行Cの貸付債務はA社に残した例では、CがA社へ引き続き請求できるかを確認します。異議権の対象外となることがあるとしても、それだけで保護が全くないとはいえません。A社の認識やB社の認識、承継財産の価額などを踏まえ、残存債権者保護の規定を検討します。
似た制度との違い
異議権のある債権者に手続を行わなかった場合の保護と、債務は残ったが資産流出で害された債権者の保護は、別の条文・要件です。また、会社分割によってすべての債務が当然に承継会社へ移るわけでもありません。
確認問題
解答・解説:そのようにはいえません。759条4項又は764条4項などの残存債権者保護を検討します。分割の種類と、害することについての各当事者の認識等を条文に沿って確認します。
根拠条文
よくある質問
分割後も分割会社に履行請求できる債権者は、会社分割で害されても会社法上の保護を受ける余地がないか。
そのようにはいえません。759条4項又は764条4項などの残存債権者保護を検討します。分割の種類と、害することについての各当事者の認識等を条文に沿って確認します。