合併では、消滅会社の権利義務が存続会社又は新設会社へ包括的に承継されます。契約・計画の内容、株主の承認、債権者の異議手続を順に確認し、単なる事業譲渡との違いを押さえます。
仕組みと条文の読み方
吸収合併は一方の会社が存続する方式、新設合併は新しい会社を設立する方式です。吸収合併では749条等の契約内容を定め、750条等により効力発生日に権利義務が承継されます。資産だけを買い取る売買と異なり、原則として負債も含む包括承継であることが、債権者保護手続を考える出発点になります。
株主総会の承認は消滅会社と存続会社の立場を分けて確認します。783条・795条等が基本ですが、略式・簡易手続の要件を満たす場合には承認決議を要しないことがあります。株主総会が不要であることから、債権者保護手続も不要と推論してはいけません。
吸収合併では789条・799条、新設合併では810条等により債権者の異議手続が問題になります。原則として官報公告と知れている債権者への各別の催告を行い、異議期間は1か月以上必要です。所定の公告を重ねることで各別催告を省略できる場面があるため、公告方法と会社の立場を条文で確かめます。
適法な期間内に異議を述べた債権者には、原則として弁済、相当の担保提供又は相当の財産の信託が必要です。合併をしてもその債権者を害するおそれがない場合には例外があります。異議が一件でも出れば合併が絶対にできなくなる、という拒否権の制度ではありません。
事例を検討する順番
- 吸収合併か新設合併か、各会社の立場を整理する。
- 契約・計画と株主承認の要否を確認する。
- 公告・催告・異議期間と、異議を述べた債権者への対応を判断する。
具体例に当てはめる
A社がB社を吸収合併し、B社に対する貸付債権を持つCが期限内に異議を述べた例では、Cの債権がA社に承継されることを確認したうえで、弁済や担保提供等の必要性を検討します。Cの異議だけで手続が永久に止まるとはいえませんが、A社の資産が多いという印象だけで保護措置を省略することもできません。
似た制度との違い
事業譲渡は、個々の権利義務を移す仕組みを基本とし、契約上の地位の移転等に相手方の同意が問題となります。合併の包括承継と同じように「事業が移るから借金も当然にすべて移る」と説明すると、制度の違いを見失います。
確認問題
解答・解説:できません。株主承認の省略と債権者保護は別の規律です。各会社の立場に応じて789条・799条等の要件を確認します。
根拠条文
よくある質問
簡易合併の要件を満たして株主総会の承認を省略できる場合、債権者の異議手続も当然に省略できるか。
できません。株主承認の省略と債権者保護は別の規律です。各会社の立場に応じて789条・799条等の要件を確認します。