Case Brief
三菱樹脂事件|私人間効力・採用の自由と本採用拒否
思想・信条に関わる採用時の調査と、試用期間後の本採用拒否を扱った大法廷判決です。憲法の私人間効力と、雇用関係の具体的な判断を分けて読みます。
更新日: 2026年10月23日
裁判所
最高裁判所大法廷
判決日
1973-12-12
引用
民集 第27巻11号1536頁
判旨・学習上の位置づけ
事案:会社が採用選考で学生運動等の経歴を尋ね、採用後の試用期間中に、応募者の回答や経歴を理由として本採用を拒否したため、労働契約関係の存否が争われました。採用の自由と、既に雇い入れた後の留保解約権の行使が交わる事案です。 争点:憲法の思想・信条や平等の保障が私人間に直接適用されるか、会社の採用の自由はどこまで認められるか、試用期間後に本採用を拒める条件は何かが問題となりました。 判断:最高裁は、自由権的な人権保障を原則として国・公共団体と個人の関係の規律と捉え、私人間では民法の一般条項等による調整を考えました。企業の採用の自由を認める一方、留保解約権の行使には客観的に合理的な理由と社会的な相当性が必要であるとし、原判決を破棄して差し戻しました。会社の本採用拒否を、そのまま最終的に有効と確定した判決ではありません。
射程
採用前に契約を結ぶかの判断と、試用期間中の雇用を終了させる判断は異なります。採用の自由を述べた部分だけから、採用後の解雇も自由にできると理解しないことが重要です。 私人間に憲法が同じ形で直接適用されないことは、人権の趣旨を考慮できないという意味ではありません。現在の事例では、その後の労働関係法令等も確認し、1973年の事案の結論を無条件に流用しないようにします。
根拠条文・参考資料
資料の確認日:2026年10月23日