不真正不作為犯は、積極的な行為を予定する犯罪を、必要な行為をしないことによって実現する場合です。助けなかったという道徳的評価だけでなく、法的な作為義務と具体的な行為可能性等を検討します。
制度と判断の出発点
誰かが危険にあると知りながら助けなかった人を、すべて殺人罪等の主体にできるわけではありません。保護を引き受けた関係、先行する行為による危険の発生、危険の支配等、なぜその人に結果を防ぐ義務があるのかを具体化します。法令や契約の有無だけに形式的に還元しない検討が必要です。
作為義務があっても、必要な行為をすることが可能だったか、行為をすれば結果を回避できたかを確認します。不作為を実行行為として評価できるかという同価値性も問題になります。作為犯の場合と同様、故意・過失や結果とのつながり等を別に満たす必要があります。
事例で確認する順番
- 誰がどの危険に対し、どの行為を求められていたかを特定する。
- 保護関係や危険の支配から作為義務を説明し、作為可能性・結果回避を検討する。
- 実行行為との同価値性と、結果・故意等の要件を順に判断する。
具体例で考える
幼児を単独で監護するAが、生命の危険を知りながら必要な食事を与えなかった場合を考えます。監護の引受け、他の保護者がいない事情、食事を与えられたか、与えれば結果を避けられたかを分けます。近くを通った無関係な人の場合と同じ責任にはしません。
区別しておきたい点
刑法には、不退去罪等のように不作為を条文上予定する犯罪もあります。これらの真正不作為犯と、殺人罪等を不作為で実現する場合を区別します。保護責任者遺棄等の個別の構成要件との関係も検討事項です。
確認問題
解答・解説:その人に、被害者の生命を守る法的な作為義務があるかです。保護の引受けや危険の発生・支配等を確認し、救助できたか、結果を防げたかを続けて検討します。
根拠条文・判例
よくある質問
危険を見た人が救助しなかった場合、殺人罪の不作為を検討するためにまず特定すべき事情は何ですか。
その人に、被害者の生命を守る法的な作為義務があるかです。保護の引受けや危険の発生・支配等を確認し、救助できたか、結果を防げたかを続けて検討します。