文書偽造では、嘘が書かれていることと、他人名義を冒用したことを区別します。作成名義、権限、行使目的を確認し、現行法の電磁的記録文書等も条文に沿って読みます。
要件と制度の位置づけ
有形偽造は、文書に表示された作成名義人と実際の作成者の人格の同一性を偽ることを中心とする整理です。自分が作成者として書いた内容の嘘は、無形偽造の問題として区別します。内容が誤っている文書すべてが159条の私文書偽造になるわけではありません。他人名を使ったかに加え、承諾や作成権限、文書が証明する事柄を確認します。
155条は公文書、159条は権利・義務又は事実証明に関する私文書等について、印章等の使用の有無や偽造・変造を区別します。現行条文は、紙の文書等だけでなく、文書等として表示されて行使される電磁的記録文書等と電磁的記録印章等も規定しています。電子データならすべて同じ類型とせず、条文上の対象に当たるか、161条の2等との関係も確認します。
行使の目的は、偽造時点において真正に成立した文書のように用いる目的があったかを確認します。実際に相手へ提出したことは、偽造と別の行使罪の検討に関わります。虚偽公文書作成を定める156条、公正証書原本不実記載等を定める157条、偽造私文書等行使を定める161条などを、作成権限と行為の違いから整理します。
判断の順序
- 対象が証明する事柄と、表示上の名義人・実際の作成者を特定する。
- 公私の区別、作成権限、印章等の使用、偽造・変造を確認する。
- 行使目的と実際の行使を分け、電磁的記録の場合も現行条文に戻る。
具体例で考える
AがBの承諾なくB名義の借用書を作り、真正な借用書として提出するつもりだった例と、A自身の名義で返済予定について嘘を書いた例は異なります。前者は名義の真正、後者は内容の真実性が中心です。さらに、Bから代理作成を頼まれた場合は、権限の範囲と表示された作成名義を確認します。
区別すべき問題
民法上その契約が無効かという問題と、文書への公共の信用を侵害するかは同一ではありません。また、実際に金銭を得た場合は詐欺罪等を別に検討し、偽造と財産取得を一つの要件にまとめません。
確認問題
解答・解説:常になるわけではありません。名義の真正を偽る有形偽造と内容虚偽を区別します。対象文書、名義、作成権限、行使目的を確認し、別の処罰規定の有無も個別に検討します。
根拠となる一次資料
よくある質問
自分の名義で作成した私文書に嘘の内容を書けば、それだけで常に159条の私文書偽造になりますか。
常になるわけではありません。名義の真正を偽る有形偽造と内容虚偽を区別します。対象文書、名義、作成権限、行使目的を確認し、別の処罰規定の有無も個別に検討します。