新株発行を争う場合は、効力発生前か後かで手段が変わります。発行前の差止め、発行後の無効の訴え、発行という外観自体を争う不存在確認を区別し、会社類型と提訴期間を確認します。
仕組みと条文の読み方
210条は、法令・定款に違反する発行又は著しく不公正な方法による発行により、株主が不利益を受けるおそれがあるときの差止請求を定めます。株価が下がるという結果だけで直ちに差止めが認められるわけではなく、発行の方法・条件・目的と株主に及ぼす影響を関連付けます。
既に発行の効力が生じた場合は、828条1項2号の株式発行無効の訴えを検討します。原則は効力発生日から6か月以内、公開会社でない株式会社では1年以内です。会社法上の公開会社は、上場会社と同じ意味ではありません。譲渡制限に関する定款の内容を先に確認します。
無効の訴えは828条2項の原告適格を満たす者に限られます。違法な手続があったから誰でも一般の確認訴訟でいつまでも無効を主張できる、という仕組みではありません。無効原因の判断でも、発行後の取引の安定、違反の内容、公開会社かどうかなどの位置付けを意識します。
株式発行無効判決の効力は、838条・839条により対世効と将来効が問題になります。不存在確認は829条の別の訴えであり、無効の期間を過ぎた事案を理由なく不存在と言い換えて救済することはできません。そもそも発行の実体がないか、発行はあるが瑕疵を伴うかを事実で分けます。
事例を検討する順番
- 発行の効力発生日と請求時点を時系列で置く。
- 違法・不公正と株主の不利益を具体化する。
- 発行後は会社類型、原告適格、提訴期間と判決の効力を確認する。
具体例に当てはめる
非公開会社A社が必要な手続を欠いて新株を発行し、その効力発生から8か月後に株主Bが争う場面では、単に「6か月を過ぎた」として終わらせません。公開会社でない株式会社についての1年の期間と、Bの原告適格、具体的な無効原因を検討します。一方、発行前なら差止めによって不利益を防ぐ発想が先になります。
似た制度との違い
差止めは将来の発行を防ぐ請求で、無効の訴えは既に生じた発行の効力を争います。不存在確認は発行の実体・外観の評価を伴う別の問題です。手続違反の名前だけで三つの請求を自由に置き換えないようにします。
確認問題
解答・解説:必ずしもなりません。828条1項2号は、その会社では効力発生日から1年以内としています。期間内でも、原告適格と無効原因は別に満たす必要があります。
根拠条文
よくある質問
公開会社でない株式会社の新株発行から8か月後には、株式発行無効の訴えは必ず期間徒過になるか。
必ずしもなりません。828条1項2号は、その会社では効力発生日から1年以内としています。期間内でも、原告適格と無効原因は別に満たす必要があります。