論点解説
株主代表訴訟と株主自身の損害賠償請求の違い|請求権と賠償金の帰属
株主が提訴する場合でも、会社の権利を追及する代表訴訟と、株主自身の権利による請求は異なります。賠償金の帰属、提訴請求、60日の待機を整理します。
「株主が原告」という点だけでは訴えの性質は決まりません。会社のために会社の請求権を追及するのか、株主が自分の損害の賠償を求めるのかを確認します。この区別は、訴状で誰への支払を求めるかにも表れます。
違いを比較する
確認する点 | 株主代表訴訟 | 株主自身の請求 |
|---|---|---|
追及する権利 | 会社に帰属する責任追及等の請求権 | 株主自身に成立する請求権 |
賠償金の帰属先 | 会社 | 請求が認められた株主自身 |
主な検討事項 | 847条の株主資格、会社への提訴請求、待機等 | 429条や民法709条等の個別の要件と損害 |
株価の下落 | 会社の請求権を追及することとは区別 | 下落しただけで個人への賠償が当然に認められるわけではない |
代表訴訟では会社に対応の機会を与える
847条の原則では、株主は会社へ提訴請求をし、会社が60日以内に訴えを提起しないときに自ら提起できます。公開会社では原則6か月の継続保有を要し、定款による短縮や非公開会社の特則があります。待機によって会社に回復不能な損害が生じるおそれがある場合の例外も、株主個人の都合とは区別します。
費用の償還と賠償金は別
勝訴した株主は852条1項により必要な費用等の相当額を会社に請求できる場合があります。これは、取締役が会社へ支払う賠償金を株主が取得するという意味ではありません。敗訴した場合も、852条2項は悪意がある場合を除き、株主の会社への賠償責任を否定します。
事例で区別する
Dの任務懈怠でX社に1,000万円の損害が生じました。株主Aが適法に代表訴訟を提起するなら、基本となるのはDからX社への賠償です。Aの持株比率が10%でも、賠償金の10%をAへ支払わせる訴えにはなりません。
条件が変わったら
Aが自分への支払を求める場合は、A固有の請求権と損害を別に検討します。会社財産の減少に伴って株価が下がったというだけで、会社の損害と同額の個人請求を二重に認めるわけではありません。間接損害の扱い等は個別の争点となります。
混同しやすい点
誰が提訴するかと、誰の請求権かを分ける。
会社への賠償と株主の訴訟費用等の請求を混ぜない。
株主個人の請求にも、任務懈怠・主観的要件・損害・因果関係等の検討が必要。
確認3問
問1 代表訴訟の賠償金は提訴株主の報酬ですか。
問2 非公開会社でも一律に6か月の保有が必要ですか。
問3 株主が急いでいるだけで60日の待機を省略できますか。
解答と理由
問1の解答
いいえ。会社の請求権を追及するため、会社に帰属します。
問2の解答
いいえ。847条2項の特則により、1項の継続保有期間の要件は適用されません。
問3の解答
できません。847条5項の会社に生じる回復不能な損害のおそれ等を確認します。
法令確認日:2026年10月27日。事例と確認問題は学習用に作成したものです。具体的な事件では適用時点や経過措置も確認してください。