占有訴権は、所有権があるかとは別に、現にある占有状態を保護します。奪われた占有の回復、妨害の停止、妨害のおそれの除去を区別し、占有侵害の態様に応じて請求を選びます。
制度と判断の出発点
占有回収の訴えは占有を奪われた場合、占有保持の訴えは占有を妨害された場合、占有保全の訴えは妨害のおそれがある場合に問題となります。所有権等の本権を証明しなくても、占有という事実とその侵害を基に保護を求める制度です。
占有の訴えと本権の訴えは相互に妨げられませんが、占有の訴えを本権に関する理由に基づいて裁判することはできません。これは自力による奪取を正当化しないための規律です。本権に基づく反訴が許される場面と、占有訴訟の本訴の判断理由は分けて整理します。
事例で確認する順番
- 占有が奪われたのか、妨害されているのか、妨害のおそれにとどまるかを分ける。
- 請求の相手方と、各訴えに固有の期間・承継人の扱いを確認する。
- 占有に基づく請求と所有権に基づく請求を分けて構成する。
具体例で考える
Aが使用している部屋からBが実力で荷物を出し、Aの占有を奪ったとします。Bが自分の所有する部屋だと主張しても、その一事でAの占有回収の訴えが排斥されるわけではありません。所有権による返還請求の成否は別途検討します。
区別しておきたい点
占有回収の訴えでは、奪われた時から1年という期間や、特定承継人に対する請求の制限があります。占有訴権があるから所有権も認められる、又は不法占有だから占有保護が一切ない、という説明は避けます。
確認問題
解答・解説:できません。占有の訴えは本権の理由だけで裁判できないためです。占有侵奪の有無と、本権に基づく請求を分けて検討します。
根拠条文・判例
よくある質問
占有回収の訴えで、被告は自分が所有者だと示すだけで当然に勝訴できますか。
できません。占有の訴えは本権の理由だけで裁判できないためです。占有侵奪の有無と、本権に基づく請求を分けて検討します。