責任能力は、精神障害の診断名だけで決まりません。行為時の弁識能力・行動制御能力と、酩酊などを自ら招いた過程を分け、心神喪失・心神耗弱の効果を確認します。
要件と制度の位置づけ
刑法39条1項は心神喪失者の行為を罰せず、2項は心神耗弱者の行為の刑を減軽すると定めます。学習上は、精神の障害によって、行為の善悪を判断する能力又はその判断に従って行動する能力を欠く場合と、それが著しく低下した場合を区別します。病名、通院歴、飲酒の有無をそのまま法的な結論へ置き換えないことが出発点です。
最高裁平成20年4月25日判決は、精神障害と能力への影響について、採用できない合理的な事情がない限り精神医学者の鑑定意見を十分に尊重すべきとしました。責任能力の最終的な判断が裁判所の仕事であることは、医学的知見を理由なく退けてよいという意味ではありません。犯行前後の一見合理的な行動だけを取り上げず、障害と行為との関係を見ます。
原因において自由な行為は、責任能力のある段階で自ら後の責任無能力等の状態を招き、その状態で犯罪結果を実現した場合の責任を検討する考え方です。飲酒すれば常に完全な故意責任を負うという規則ではありません。原因行為の時点での故意又は過失、後の行為へのつながり、問題となる犯罪の性質を具体化し、理論構成に争いがあることも踏まえます。
判断の順序
- 犯罪行為時の精神状態と、弁識・制御能力への影響を確認する。
- 39条1項の不処罰と2項の必要的減軽を区別する。
- 自ら状態を招いた場合は、原因行為時の認識と後の結果との関係を検討する。
具体例で考える
Aが犯罪を実行するつもりで飲酒し、その後に能力を失って予定していた行為に及んだ例と、通常の飲酒で予想できない病的な状態に陥った例は、同じ「酔っていた」という語だけで処理できません。前者でも、どの時点に殺意があり、どの行為が結果につながったかを確かめます。原因行為時の故意と、行為時の能力の評価を別々に示します。
区別すべき問題
心神喪失と心神耗弱は効果が異なり、後者は必ず刑を減軽する規定です。犯罪の成否と、治療や医療観察等の制度の適用も別の問題です。「罰しない」から社会的な対応がすべてなくなるとは説明しません。
確認問題
解答・解説:必ずそうなるわけではありません。障害が弁識・制御能力に与えた影響を判断します。能力を欠く心神喪失、著しく低下した心神耗弱、完全責任能力を区別し、医学的鑑定も十分に尊重して検討します。
根拠となる一次資料
よくある質問
行為時に精神疾患の診断があれば、39条1項により必ず処罰されませんか。
必ずそうなるわけではありません。障害が弁識・制御能力に与えた影響を判断します。能力を欠く心神喪失、著しく低下した心神耗弱、完全責任能力を区別し、医学的鑑定も十分に尊重して検討します。