放火罪は、何に火をつけたかで適用条文が変わります。人の居住・現在の所在、所有関係、焼損の時期、公共の危険の要否を順番に確認します。
要件と制度の位置づけ
108条は現に住居に使用する建造物等、又は現に人がいる建造物等を対象とします。現住性と現在性は別の基準です。家族が外出している住宅でも、住居として使われていれば「今だれもいない」という理由だけで非現住とはいえません。109条は非現住かつ非現在の建造物等を、110条はそれら以外の物を扱います。
焼損の判断では、媒介物から火が移ったという事実と、目的物が独立して燃焼を継続できる状態に達したことを区別します。裁判所掲載の放火事件判決も、床面や壁面へ燃え移り独立して燃焼を継続し得る状態を具体的に認定しています。建物全体の全焼が必要という意味ではなく、反対に、煤が付いたことだけで当然に既遂になるわけでもありません。
公共の危険の扱いは条文ごとに異なります。108条や109条1項について、110条と同じ形で公共の危険の発生という独立の結果を加えることはしません。自己所有の非現住建造物等を扱う109条2項ただし書や、建造物等以外の物を扱う110条では、公共の危険の有無を確認します。自己所有物ならどこで何を燃やしても処罰されない、という理解も誤りです。
判断の順序
- 放火対象の種類、居住・在所の状況、所有関係を確認する。
- 目的物自体が焼損したかを、燃焼の状況から判断する。
- 選んだ条文について公共の危険や未遂処罰の要件を確認する。
具体例で考える
Aが自分の家に火をつけ、家族が買物で外出中だった例では、現に住居に使われている建物かを調べます。自己所有で無人だったという二点だけで109条2項に進みません。また、空き地で自分の家具に火をつけた例は、建造物とは別に110条の対象と公共の危険を検討します。対象の分類が、その後に必要な検討を変えます。
区別すべき問題
放火の実行の着手と焼損による既遂は別の時点です。焼損に至らない場合も、112条が未遂を処罰する範囲を条文で確認します。放火罪のすべての類型について未遂を一律に処罰する規定ではありません。
確認問題
解答・解説:なりません。108条は現に住居に使用する建造物を含み、現在そこに人がいるかとは別です。生活の実態から現住性を確認し、所有関係だけで条文を決めないようにします。
根拠となる一次資料
よくある質問
人が住んでいる自己所有の家でも、家族が全員外出している間なら、必ず非現住建造物等放火の問題になりますか。
なりません。108条は現に住居に使用する建造物を含み、現在そこに人がいるかとは別です。生活の実態から現住性を確認し、所有関係だけで条文を決めないようにします。