論点解説
執行停止と仮の義務付け・仮の差止めの違い
既存の処分を止める執行停止、処分を仮に求める義務付け、将来の処分を仮に止める差止めを、本案と損害要件の違いから比較します。
行政事件の暫定的な救済を選ぶときは、「今何が起きていて、どの状態を仮に実現したいか」を先に言葉にします。同じ緊急の申立てでも、既に出た処分を止めることと、出ていない処分を求めることは違います。
違いを比較する
制度 | 本案との関係 | 望む暫定状態 |
|---|---|---|
執行停止 | 取消訴訟等に伴う救済 | 処分の効力・執行・手続続行を止める |
仮の義務付け | 義務付けの訴えの提起が前提 | 行政庁に仮に処分等をさせる |
仮の差止め | 差止めの訴えの提起が前提 | 行政庁が仮に処分等をしないようにする |
すでにされた処分か、これからの処分か
営業停止処分が出ている場合には執行停止の場面を考えます。申請に対して必要な処分がされない場合には義務付けと仮の義務付け、これから一定の処分がされるのを防ぐ場合には差止めと仮の差止めを検討します。ただし申請拒否がある場合、拒否の効力を止めただけで許可を得た地位になるとは限りません。求める救済の効果を具体化します。
損害と本案の見込みの文言が違う
行訴法25条の執行停止は、重大な損害を避ける緊急の必要等を検討します。本案について理由がないとみえるときなどは認められません。37条の5の仮の義務付け・仮の差止めは、償うことのできない損害を避ける緊急の必要に加え、本案について理由があるとみえることを要します。「重大な損害」と「償うことのできない損害」を同じ文言にしないことが大切です。
公共の福祉と選ぶ停止の範囲を確認する
公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれという制限も確認します。執行停止では、執行又は手続の続行の停止で目的を達するなら、処分の効力の停止はできないという25条2項ただし書も読みます。緊急だから必ず最も広い救済になるという関係ではありません。
設例で使い分ける
以下は学習用に作成した設例です。Aは許可申請を拒否されました。Aは「拒否処分を停止してもらえば、当然に許可されたのと同じ状態になる」と考えています。
拒否の効力を止めることと、許可を仮に出させることは効果が違います。本案として何を求めるかを特定し、仮の義務付けの条件などを検討します。停止という名称だけで、必要な積極的な地位を得られると説明しません。
確認問題
仮の義務付けも、本案について理由がないとみえなければそれだけで認められますか。
解答・解説:いいえ。37条の5は本案について理由があるとみえることを積極的に要求し、損害・緊急性等の条件もあります。
復習の手順
比較表の制度名を隠し、対象・要件・効果の違いを自分の言葉で説明します。次に設例の事実を一つ変え、結論に影響する条件を指摘します。詳しい判断枠組みは、下の関連図鑑で確認してください。
法令確認日:2026年10月28日。試験で使う法令の基準日が異なる場合は、適用される施行版を確認してください。