先取特権は、法律が特定の債権を保護するために認める優先弁済の権利です。契約で設定する抵当権と区別し、債権の原因、対象財産、他の権利との優先関係を確認します。
制度の仕組みと検討する要件
303条は、法律の定める債権について、債務者の財産から他の債権者に先立って弁済を受ける先取特権を認めます。一般先取特権、動産先取特権、不動産先取特権では対象財産が異なります。債権があるだけで一般的に優先されるのではなく、その原因が法定の類型に当たるかを特定します。
306条の一般先取特権には共益費用、雇用関係、葬式費用、日用品供給の債権があります。311条以下の動産先取特権には不動産賃貸や動産売買などに由来するものがあります。それぞれについて担保される範囲や対象物の条件が定められるため、名称だけで対象物を広げないようにします。
動産先取特権は、333条により、債務者が目的動産を第三取得者へ引き渡した後、その動産について行使できなくなります。第三者の善悪や契約締結だけでなく、引渡しという事実が重要です。複数の先取特権や質権等が競合する場合は、329条以下などの順位規定を事件ごとに確認します。
判断の順序
- 保護される債権の発生原因を法定類型に当てはめる。
- 一般財産か特定の動産・不動産かを特定する。
- 第三取得者への引渡しと競合する担保権を確認する。
事例へのあてはめ
AがBに機械を売り、代金を受け取っていないうちに、BがCへその機械を転売して引き渡した場合を考えます。Aの動産売買先取特権については、まず売買代金債権と目的物の対応を確認します。そのうえで、すでにCへ引き渡されているという事実が333条の行使制限に関わります。未払代金が残るというだけで、Cのもとにある機械を当然に追えるわけではありません。
混同しやすい点
先取特権は法定担保物権、質権や抵当権は合意による担保設定が基本です。留置権とも機能が異なり、優先弁済を受ける権利と、物の返還を拒む権利を混同しないことが重要です。
確認問題
解答・解説:必ず行使できるわけではありません。333条は第三取得者への引渡し後の行使を制限します。物上代位などの別の権利行使が可能かは、対象債権と手続を分けて検討します。
根拠となる一次資料
よくある質問
動産売買の先取特権は、買主が第三者へ目的物を引き渡した後も、その動産に対し必ず行使できますか。
必ず行使できるわけではありません。333条は第三取得者への引渡し後の行使を制限します。物上代位などの別の権利行使が可能かは、対象債権と手続を分けて検討します。