他人の物について生じた弁済期の債権があるとき、一定の条件でその物の返還を拒めます。留置権の成立には占有と債権の関連性が必要で、単に未払金があるというだけでは足りません。
制度の仕組みと検討する要件
295条の留置権は、他人の物を占有し、その物に関して生じた債権を持ち、その債権が弁済期にある場合に問題になります。その占有が不法行為によって始まった場合は成立しません。誰の物を、どのような経緯で占有し、何の代金や費用を請求しているかを結び付けます。
296条により、債権全部の弁済を受けるまで留置物全部について権利を行使できます。一部の支払があったからといって、当然に物の同じ割合を引き渡す規律ではありません。一方、留置権者は善良な管理者の注意で物を保管し、無断使用などに関する298条の制約を受けます。
留置権の行使は、300条により債権の消滅時効の進行を妨げません。物を持ち続けているから時効を気にしなくてよいとはいえません。また、占有を失うと原則として留置権は消滅し、相当の担保の提供による消滅請求もあります。成立時だけでなく、その後の占有・担保・弁済を確認します。
判断の順序
- 他人の物の占有と、その取得経緯を確認する。
- その物と債権の関連性、債権の弁済期を検討する。
- 弁済・担保の提供・占有喪失による変化を確認する。
事例へのあてはめ
Aから時計の修理を頼まれたBが修理を終え、修理代金の支払期が来たのにAが払わない場合、その時計に関して生じた債権として留置権を検討できます。BがAに対して別件の貸金債権を持つというだけでは、時計との関連性は別に問題になります。また、保管している時計をBが勝手に日常使用してよいことにはなりません。
混同しやすい点
留置権は物の引渡しを拒むことで弁済を促す権利です。抵当権や先取特権と同じように、通常の優先弁済権があると説明するのは正確ではありません。留置できるかと、代金を優先して配当されるかを区別します。
確認問題
解答・解説:止まりません。300条は留置権の行使が債権の消滅時効の進行を妨げないと定めています。留置権の維持と債権自体の時効への対応は別の問題です。
根拠となる一次資料
よくある質問
修理代金について留置権を行使していれば、代金債権の消滅時効の進行は止まりますか。
止まりません。300条は留置権の行使が債権の消滅時効の進行を妨げないと定めています。留置権の維持と債権自体の時効への対応は別の問題です。