委任は法律行為をすることを相手に任せる契約です。受任者は報酬の有無にかかわらず善管注意義務を負い、契約の終了時には解除できることと損害賠償の要否を分けて考えます。
制度の仕組みと検討する要件
643条の委任は、一方が法律行為をすることを委託し、相手が承諾することで成立します。法律行為以外の事務の委託には656条の準委任が問題になります。644条による受任者の善管注意義務は、無償の委任にも及び、報酬がないから自己のためと同じ程度の注意で足りるとはいえません。
受任者は委任の本旨に従い事務を処理し、645条により、請求があれば処理状況を報告し、終了後には経過・結果を報告する義務があります。何を任されたかという範囲と、処理の方法・報告の義務を確定します。結果が期待どおりでなかったという事実だけで、当然に注意義務違反としないようにします。
651条は各当事者がいつでも解除できることを基本としますが、相手方に不利な時期の解除や、受任者の利益をも目的とする委任の委任者による解除などには損害賠償の問題があります。やむを得ない事由などの規律も確認します。解除の効力と、解除に伴う金銭的な責任を別々に判断します。
判断の順序
- 法律行為の委任か、事実上の事務の準委任かを確認する。
- 委任の範囲と善管注意・報告義務の履行を検討する。
- 解除の可否と、時期・利益・やむを得ない事由による賠償を分ける。
事例へのあてはめ
AがBへ不動産売却の契約手続を無償で依頼し、Bが承諾した例では、無償であってもBの善管注意義務が問題になります。Bが解除を申し出た場面では、いつでも解除できるという原則だけでなく、決済直前などAに不利な時期か、やむを得ない理由があるかを確認します。解除できることと、損害を負担しないことは同じではありません。
混同しやすい点
請負では仕事の完成が契約の中心ですが、委任・準委任では、合意した事務をどのように処理する義務を負ったかが問題になります。また、代理は相手との法律行為の効果を本人に帰属させる制度であり、委任契約と完全に同じ概念ではありません。
確認問題
解答・解説:いえません。644条は受任者に委任の本旨に従った善管注意義務を課しており、無償の委任を除外していません。具体的にどの注意を払うべきだったかを事務内容から判断します。
根拠となる一次資料
よくある質問
報酬のない委任では、受任者は644条の善管注意義務を負わないといえますか。
いえません。644条は受任者に委任の本旨に従った善管注意義務を課しており、無償の委任を除外していません。具体的にどの注意を払うべきだったかを事務内容から判断します。