契約や法令上の義務がなくても、他人のために事務を始めると、事務管理として一定の義務が生じます。親切な行為のすべてを同じ扱いにせず、管理の対象と本人の利益・意思を確認します。
制度の仕組みと検討する要件
697条は、義務なく他人のために事務の管理を始めた者に対し、その事務の性質に従って、最も本人の利益に適合する方法で管理する義務を課します。本人の意思を知り、又は推知できるときは、その意思に従います。委任契約がないというだけで、開始後の行動に何の規律もないわけではありません。
最初に、処理した事務が誰のものか、管理者に契約・法令上の義務があったか、他人のためにする意思があったかを確認します。本人が不在の間に財産を守るため行動した例は検討対象になりますが、自己のために行った処理について、結果的に他人も利益を得たというだけで結論を出さないようにします。
本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を避けるための緊急事務管理では、698条により責任が悪意又は重大な過失のある場合に限られます。費用の償還は702条で別に検討し、使った金額全額が常に返ると考えないことが大切です。本人の意思に反した管理では、現存利益による制限があります。
判断の順序
- 契約・法令による管理義務の有無を確認する。
- 他人の事務を他人のために処理したかを判断する。
- 本人の利益・意思と、費用償還の範囲を分けて検討する。
事例へのあてはめ
長期不在の隣人Aの家で水道管が破れ、室内へ水が広がっていたため、Bが応急修理を依頼したとします。Bに修理を手配する契約上の義務がないなら、Aの財産を守る事務管理を検討できます。漏水を止めるための必要な費用と、Bの好みで内装を高級品へ替えた費用は、本人の利益に適合するかを同じように扱えません。
混同しやすい点
委任は合意に基づき、事務管理は義務のない事務の開始を出発点とします。不当利得とも重なる場面がありますが、事務管理では管理方法、通知・継続など開始後の義務も問題になります。費用返還だけを見て制度を選ばないようにします。
確認問題
解答・解説:すべて請求できるわけではありません。本人の意思に反する事務管理の費用償還は、本人が現に利益を受けている限度に制限されます。管理の適否と残存する利益を確かめます。
根拠となる一次資料
よくある質問
本人の意思に反して管理をした者でも、使った費用をすべて702条で請求できますか。
すべて請求できるわけではありません。本人の意思に反する事務管理の費用償還は、本人が現に利益を受けている限度に制限されます。管理の適否と残存する利益を確かめます。