論点解説
正当防衛と緊急避難の違い|侵害・危難・利益を比較
正当防衛と緊急避難を、急迫不正の侵害と現在の危難、行為の必要性、害の比較から整理します。第三者の財産に害を与える設例で区別を練習します。
危険から逃れる行為でも、相手の違法な侵害に反撃するのか、危難を避けるため別の利益へ害を与えるのかで検討する制度は変わります。条文の似た言葉と違う言葉を並べて読むと、判断の出発点が見えます。
違いを比較する
比較点 | 正当防衛・36条 | 緊急避難・37条 |
|---|---|---|
入口 | 急迫不正の侵害 | 生命・身体・自由・財産への現在の危難 |
目的 | 自己又は他人の権利の防衛 | 自己又は他人の列挙された利益の危難回避 |
害の扱い | やむを得ずにした防衛行為か | 生じた害が避ける害の程度を超えないか |
過剰の場合 | 情状による減免の可能性 | 程度を超えた場合の減免規定と2項の特則 |
侵害と危難の出所を確認する
36条では急迫不正の侵害を特定します。37条の危難は人の違法行為に限らず、自然現象などでも問題となります。ただし、危険があるというだけで行為が全て正当化されるわけではありません。何を守り、誰のどの利益を害したかを図に書いてみます。
必要性と害の比較を省略しない
正当防衛の「やむを得ず」に当たるかは、防衛としての必要性・相当性を具体的に考えます。緊急避難では、他に危難を避ける方法があるかという補充性と、条文の害の比較を検討します。両者を「大きな利益を守ったからよい」という一文にまとめないことが大切です。
防衛・避難と過剰の効果を分ける
条件を満たす場合と、程度を超えて情状による刑の減軽・免除が問題となる場合は別です。緊急避難では業務上特別の義務がある者に関する37条2項も確認します。職業名だけから無制限の危険負担を決めるのではなく、その危難と義務の関係を考えます。
設例で使い分ける
以下は学習用に作成した設例です。Aは突然の落石を避けるため、近くの無関係なBの柵を壊して安全な場所へ逃げました。別の経路で安全に逃げることができたかは争われています。
落石という現在の危難と、Bの財産を害した行為を対応させ、まず37条の緊急避難を検討します。他の安全な方法の有無と生じた害・避ける害の程度が重要です。Bから不正な侵害があったと置き換えて36条で処理しません。
確認問題
危険から逃げる行為なら、害の比較をせず全て正当防衛として説明できますか。
解答・解説:いいえ。不正な侵害への防衛か、危難回避かを特定し、各制度の条件を別に検討します。
復習の手順
比較表の制度名を隠し、対象・要件・効果の違いを自分の言葉で説明します。次に設例の事実を一つ変え、結論に影響する条件を指摘します。詳しい判断枠組みは、下の関連図鑑で確認してください。
法令確認日:2026年10月28日。試験で使う法令の基準日が異なる場合は、適用される施行版を確認してください。